現在、神社にお参りすれば、賽銭箱に小銭を入れるのは習慣だ。(赤玉は多いそうですが、「ご縁」に因んで5円を捧げることは多いからだろう。)そして、正式参拝すれば、初穂料を熨斗袋に包んで奉るのは作法である。裸で金銭を渡す人もいるそうだが、それは避けたいのだ。
しかし、クレジットなどのキャッシュレス決済方法が普及しつつある。神社が現金に拘ったら、初穂料などを受けられなくなる場合がある。最近の『神社新報』によると、神社本庁の神社祭祀新議会がこの問題に触れて、検討することにしたそうだが、このような決済を認めなければならないと私は思う。なぜかというと、日常的に現金を使わない人は、わざわざ神社のために銀行まで足を運んで現金を用意することないだろう。ATMで用意できるとしても、ただ辞めることにする可能性は高いのだ。(東京の神田神社が授与所でATMを設置したそうだが、それができる神社は本当に少ないのではないだろうか。)つまり、キャッシュレス決済を認めない神社には破綻の恐れが発生する。
それでも、宗教的なことも考えなければならない。お守りなどの授与の場合、特に問題はないだろう。決済システムを設置して、お守りの代わりの奉納を電子的に受け入れても良い。東京の神田明神は実際にもうそのような措置を導入したそうだ。
問題は賽銭と正式参拝である。正式参拝の初穂料は神事の中で神前に奉られているので、物はないと問題がある。賽銭にも同じような問題点がある。
正式参拝の方の解決先が思い浮かぶ。正式参拝で奉納するお金は「初穂料」や「玉串料」と呼ばれる。つまり、実物の初穂や玉串の代わりに納めるものである。だから、社務所で初穂と玉串を提供して、電子マネーで決済すれば良いのではないか。初穂の場合、正式参拝で供えられる神饌を用意するし、玉串の場合、玉串奉奠の儀式で捧げる玉串を用意する。そして、奉納するお金に合わせて祭祀の内容を工夫するのは今の習慣になっているが、(例えば、1万円以上の場合、神楽が奉納されるなど)、玉串や初穂も工夫できる。
重要なのは、玉串や初穂の用意に費やされる費用が奉納額を大きく下回ることである。これは神様に奉納するものですので、使い回ししてはいけない。普通の正式参拝で、¥5000で榊の枝に紙垂が付いている玉串を提供するのは良かろう。その上の金額で、より立派な玉串を用意したり、神饌を供えるために献饌の義と徹饌の儀を取り入れることはできる。
そうすれば、電子マネーに対応できるし、現金でも受け入れられるし、熨斗袋を用意しない参拝者の問題も解決される。さらに本来の姿にさらに近づく。そして、玉串を用意する手間は今でも必要であるので、神社側の負担も少ない。この問題は解決できると確信する。
賽銭の問題はさほど簡単ではない。神前でピッとカードをかざすことは、宗教的な象徴性が著しく欠いていると感じざるを得ない。小銭を賽銭箱に入れる行為にはお祓いの意味が込められていると言われるが、ピッとカードをかざすことは違うだろう。一方、わざわざ社務所まで足を運びたくない人も多いし、無人神社も多いので、正式参拝のような解決策は効かないだろう。もしかして、賽銭箱の習慣をやめて、作法を改めるしかないだろう。
永平寺の日々 – 修行に励む雲水たちの1年間
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