自分の意志を問わずに移住させられた人の場合、言語は重要な問題となる。基本的に意志は軽視されたので、もう負担している。それに言語の取得の負担を加算するのは残酷であるとも言える。一方、移住の動機は何であってもある国の共通語ができない状態で問題が発生することは変わらないので、言語を放置するわけにはいかない。
先ず、国家によって無理矢理持たれた人に対して、母語を禁じては行けない。その上、共通語の教育を無償で提供するべきだし、その提供が移民の便宜をはかるのは重要である。この場合、国家の責任は重いので、勝手を言う余裕はない。移民が加害者の国の言語の取得に対抗する可能性は高いが、この問題は国家が発生させたので、解決するのは国家の責任であり、移民の責任ではない。一般に詳細は言えない。当事者との交渉の上問題を解決すべきである。(確かに、強制移住の罪を犯した国の大半は言語の責任を背負わないとも思えるが、理念の場で理想を語っても良い。)
そして、難民の場合もある。これで、二つの場合を分けて考えるべきであろう。一つは、隣国の一時的な問題を逃げた難民である。このような難民はなるべく早く帰国したいのは原則であるので、命を助けて、後遺症を抑えるような対策をとるべきであるが、避難先の国の言語を学ばせる必要は特にない。勿論、NPOなどが提供すれば、それを歓迎するけれども。もう一つは帰国する見通しはない難民である。このような難民に言語の学ぶ場を無償で提供する必要がある。
実は、難民を受け入れることに費用も努力も必要である。言語の習得を支えることはその一部に過ぎない。別なところで難民の問題を考えたいと思うので、ここで必要性を指摘することで割愛する。
最後の種類は、親と一緒に来た子供である。この中で、移住する前に持った子供と移住先の国で生まれた子供の2種類がある。
移住する時点で持つ子供について、親の負担としても良い。つまり、言語の教育に必要な費用を親、または親を雇う企業から徴収しても良い。移住する前に学ばせることで、必要な費用を減らすこともできるし、断念する選択肢もある。これにも例外を認めても良い。例えば、ある技能の需要は特に高かったら、子供の言語教育は国家が負担することを決めても良い。そして、子供の言語学習を義務付けるのは良い。少なくとも、教室に通わせる義務を果たしてもらう。場合によって、短期滞在で猶予することもあるだろう。例えば、たった1年間滞在する予定であれば、言語の勉強を任意としても良い。しかし、滞在の合計が1年間を超えたら、義務をつけるべきなのではないかと思う。
この負担は、子供が大きければ大きいほど重くなる。原則として、国の教育制度の中で国民の子供と一緒に、同じ教室で学べるようにするべきだが、言語が全くできない14歳の子供を高校のために準備させるのは容易ではない。一方、3歳未満の子供を国の子供と遊ばせて、幼稚園などに通わせたら、自然に言語を身につける。
これで、移住後に生まれた子供の問題の対応が明らかになる。1歳ぐらいから専ら共通語を使う施設に週15時間程度以上預ける義務をつければ、自然に言語を身につける。小学校に入学する時点で、国民と同じようなレベルに達するはずなので、大きな問題は発生しない。
ヨーロッパでこのような政策を人種差別と見做す人もいるようだが、それは大きな間違いであると私は思う。子供がその国で生活することになるので、そのための最低限の能力は必要不可欠である。親にそれを拒否する権利はない。(ところで、国で生まれ育って来た子供に、原則として永住権を与えるべきであると私は思う。特に、親は合法の移民だったら、子供にも何も悪いことはないのに唯一の知っている国から追い出すことは酷い。親は違法移民であっても、それは子供の罪ではないので、変わらない。これは、幼少期に来た子供にも当て嵌まるが、何歳までになるかは、すぐに答えられない。)
勿論、子供の言語取得を原則として親の負担とするとしても、親の経済能力などが不十分になることもある。その場合、生活保護と同じ感覚で、行政が負担すべきである。移住許可を出す時点でそうならないように調べるべきであるが、将来は完璧に読めないので、不足の事態に備える必要がある。無罪の子供に負担を転嫁してはならない。