歳神様は、賓の神様である。つまり、遥か彼方から寄っていらしゃって、暫くの間の祝いを見守りながら祝福を与えてから、また常世に帰る神様である。お正月の祭祀で、楽しむ期間を司る神である。
歳神様を迎えるために、歳神棚が必要となる。これは普通の神棚と違う場所に設けるべきであるが、専用の棚ではなくても良い。箪笥などの上綺麗にして、布や和紙を敷いて臨時歳神棚を用意しても良いのである。
この歳神棚には、歳神様の依代になる神籬は必要である。そもそも、門松がこの役割を担ったと言われるので、松を使った門松のような飾りで良かろう。常緑樹が使われるのは相応しい。そして、榊を両側に立てて、狛犬のように新年の干支の動物の置物を守るように置けば良かろう。
神籬の前に、鏡餅をおく。鏡餅はそもそも歳神様への御饌だったそうであるから、ここでも欠かさない。
これまでの飾りは、数日前から用意すべきだろう。歳神様がいつからいらっしゃるかは詳しく分からないので、依代を事前に準備する。12月29日を避けて、他の注連飾りなどと一緒に設ける。
大晦日の大掃除と同時に、さらに供物を用意する。これは、二種類がある。
一つは家庭が好むお菓子やおやつである。これは三方などに盛って、手前に用意する。このお菓子等は、分けて一口ずつ簡単に取れる形とするのは良い。飴ならそもそもその形だが、例えばカステラであれば、備える前に切っておく。
もう一つはお年玉である。これはお金に限らず、家庭のお互いの贈り物をここでさす。(お金でも構わないけれども。)これも、三方等に載せて、お菓子と鏡餅の間に備える。順番(時系列)として、お菓子の前に備えるだろう。
この二つの供物は、大掃除とともに供えると良い。大祓が始まる前に供えなければならないが、お菓子を長く出しっ放しとしたら、質が劣るだろう。
お菓子は、夕食の片付けや神棚の掃除が終わったら、自由に下げていただける御饌である。もちろん、軽く頭を下げてから取るべきではあるが、他の特別な儀式は不要とする。気軽に楽しめるようにするためだ。この期間は、自由に楽しむ期間である。紅白歌合戦を見たり、家庭団欒したり、映画などを見たりすることも良い。家庭の楽しめる行動とする。
歳神様の前の儀式は、新年になってからである。
ここで、選択肢がある。ちょうど日付が変わる時点で氏神様に初詣したければ、まず初詣に出かけて、帰ってからこの儀式を行うと良い。そうしないと、日付が変わったらすぐに行う。要点は新年になってから行うことである。
家庭で歳神棚の前に揃う。大祓はまだ効いているとするので、何かの事故で穢れが特に発生していない限り、さらに御祓を必要としない。二礼してから、祝詞を奏上する。この祝詞は、お正月を寿いで、歳神様のお恵みを感謝する内容となる。普通の生活と離れる空間ですので、普通のことに触れない。
そして、祝詞の後で、拝礼する。
それから、供えられたお年玉を下げて、与え合う。これで楽しんでから、就寝する。もう未明になっているからだ。
この期間は、普通の神様ではなく、歳神様の元で祝う。だから、非日常の空間になる。