美術的な作品には性的な要素が入っていることは少なくない。油絵で裸体の名画が多いが、それで性的な要素になっている。それ自体は問題にならないことはもう述べている。
しかし、商売になると、問題がある。それは性的な誘惑から発生する問題である。例えば、有名な美人女優がある映画でヌードシーンをすることが明らかになったら、そのヌードを見るために映画を見に行く人は少なくないだろう。建前を別な理由とすることは多いが、本音はそうなのではないか。写真集の基本もそうである。
このような商売に問題があると私は思う。人間の弱点を利用して、自分の利益を確保しようとしているからだ。相手を冷静に判断できない状態に置いて、お金を取る。騙し取るまで言えないが、それでも倫理的に疑わしいのではないか。作品の他の要素で興味を集めるべきであろう。非常に強い動機になる色欲を操らない要素を魅力として出せば良いのではないか。そのことはできるのは明らかである。例えば、大ベストセラーになったあのハリー・ポッターの本の中で、性的な内容はないと言える。一方、性的な内容は作品の全体で重要な役割を担うこともある。それを倫理的に避けるべきであるとも言いたくない。例えば、作品を無料で配信すれば、このような問題はない。お金を取っていないので、弱点を利用しているとは言い難いのである。（それで興味を引いて、作品を見させているとは言えるかもしれないが、性的な内容は作品の一部であれば、それは作品の魅力で興味を引くことであるので、問題はなかろう。）
そう考えれば、問題を避ける方法はある。性的な内容がある作品を無料で配信することである。
残念ながら、それで別な問題が発生する。作者の収入はどこから入るかという問題だ。
性的な内容は作品の一部であれば、現在のネット時代では解決策があると思う。その性的な内容を無料公開するが、作品全体を有料とすることである。例えば、『ゲーム・オヴ・スローンズ』という番組で女優の裸を見る機会は少なくないと言われるが、内容のごく一部であるようだ。（実は、見たことはない。本を読んだが、私好みではないので番組を見る気はない。裸の場面が出るのは確実であるが、割合は他人の話からの判断である。）その場合、裸の場面を抜き出して、別途で無料配信サービスで公開すると良かろう。その場面を見た人は、作品には他の裸はないことがわかるので、裸を見るために作品を見ないが、その周りの話が気になったら、作品を見る可能性は低くはない。そのような誘惑は正当であると私は思う。（「この裸のシーンでネタバレもある」の警告も必要になるだろうが。）
これは、作品の種類に関係なくできることである。例えば、小説であれば、性的な行為を描写する一部を公開することができる。漫画であれば、裸が現れるページを公開することも可能である。
問題になるのは、作品の全てが性的な魅力を持つ場合。
写真集や映画であれば、対策がある。裸体を撮影するのは簡単であるので、ただ本作品と同じ量の写真や動画を撮って、無料公開する。そして、本当の作品でより芸術的な質があることを主張して、誘う。（同じぐらいの裸も見える。）これは完璧ではないが、効果がある。欠点は、登場する人の裸体を特に好む人は、さらに写真が見たいなと思ってくる可能性は高いことである。性的な内容は一部に過ぎない場合、作品の中で更なる性的な内容はないことを明記するので、この問題が発生しないが、この場合そうできない。しかし、普通の色欲がそれほど働かないだろうと思える。例えば、裸の写真集を刊行すれば、無料で同じカット数の裸のオッフショットや選択基準を満たさなかった写真を公表する。その場合、モデルの裸にしか興味を持っていない人はわざわざお金を出さないだろう。
これで問題を解決できないのは、油絵等の作品である。同じような性的内容がある作品を簡単に作成できるわけはない。しかし、この場合作者の並並ならぬ努力は必要であるので、搾取にはならないだろう。寧ろ、報われないことは多い。そして、心配を無くしたければ、性的な内容が一部を過ぎない作品を出すこともできる。
このような方針を法律で促すこともできる。例えば、裸がある映画を公開すれば、裸の部分が別に無料配信されていない場合、５０％課税することも可能である。表現の自由に一切抵触しないので憲法上問題はない。
性的な作品の問題を解決するために、そのような作品を入手しやすくすべきであるとの主張は、ちょっと常識と違うだろうが、問題を誘惑に位置付ければ、実は当然であるのではないか。これで、作者が心配せずに自分を表現する作品を公表できる。
