一人の神職が神社の運営に専念すれば、祭祀が日常の一部になってしまう虞がある。というより、日常になるのは確実である。それは好ましくないように見えるだろうが、避けることはできない。事実を憂うより、対応策を考えた方が良いので、ここでそうする。 まずは、慣れる前に、慣れてからの理想的な形を思い描くのは良いと思う。例えば、日供にどのぐらい時間を割くかを決める。その中で、準備も後片付けも含まれるべきである。これが神社の状況によって異なるので、一概に何も言えないが、例を具体化するために、30分があるとしよう。この中で装束を着けたり、禊祓いをしたり、献饌も祝詞奏上も徹饌も行わなければならない。そして、装束の後片付けもある。...
一人神職とハレ
冒頭で言っておいた方が良かろうが、毎日行うことにハレの雰囲気を与えることはできない。毎日することは必然的に日常である。だから、ハレの雰囲気を求めるべきではない。それで、何を求めても良いだろうか。 特別な祭祀を、神社の年中行事の中で設けることはできるだろう。それを日常的な祭祀と区別したら、ハレな気分を得るのではないかと思われる。例祭はすぐに思い浮かぶ。しかし、毎日祭祀を執り行う神職にとっても、そのように祭祀を特別としたら良いのだろうか。 基本は、実践する人の認識上、日常的な祭祀と区別することである。日常的な祭りと変わらなければ、ハレにはならない。参加する人が如何に多くなっても、本人の動作が毎日と通じたら、ただ毎日のことを行なっていると感じる。...
神職のハレ
参籠が長引くと慣れてしまう問題をその投稿で指摘している。そう考えれば、神職がさらに問題に直面するはずである。神職が神祀りに専念すべきであるとも言われるが、そうすれば慣れてしまうことは避けられない。私も、同じようなことを体験している。私は、大祓詞を暗記して、氏神神社に参拝する前に囁く。(道を歩いているので、堂々と唱えたら周りの人の迷惑になる。)もちろん、その内容に集中すべきである。しかし、最初に集中できたものの、最近ささやきながら頭の中で様々な話題が湧いてくる。なぜなら、慣れてきたからだ。集中しなくても良いので、すぐに別なことを考えてしまう。また祝詞に戻ろうとしても、時間がかかる。 神職はさらにそうであろう。...
参籠のハレ
参籠というのは、神社やお寺で泊まることを意味する。日常から完全に離れて、祭祀等に専念することは目的である。 しかし、大きな問題がある。それは、人間が何でもに慣れることである。非日常な環境でも、人間はすぐに慣れてしまう。特に、毎日同じようなことが起こったら、それは日常になる。つまり、毎日朝一番のご祈祷に参列すれば、すぐにハレではなくなる。 別な側面から見れば、参籠は潔斎の意味も持つ。重要な祭祀の前に一晩籠って、清浄な状態になることはある。そして、一晩であれば、もしかして慣れることはなかろう。だから、まずそのパターンを考えたいと思う。...
禊
更に日常から離れてもらうための儀式として、禊が良いと私は思う。これで、目的は禊自体ではないので、寒中の禊などと意図が明らかに違う。寧ろ、この禊の目的は神事をはっきり日常と隔離させることである。だから、神事に参加しないと意味はない。 禊の基本は水に浸かって穢れを流すことであると言えよう。体を物理的に綺麗にすることも含まれているが、体を洗うだけは非日常ではない。俗界を出る儀式とすべきであろう。 だから、まず素っ裸になる。そして、洗い場に入って、体を洗う。洗い場から、禊場に進む。禊場で、水に浸かって、禊の祝詞を奏上してもらう。そして、お水から上がって、体を拭いて、純白の和装に着替える。...
昇殿参拝
昇殿参拝でハレの気分を醸すのはそれほど難しくないだろう。普段しないことですし、参拝する前に手続きは必要であるので、参拝に集中することは当然である。参拝者は外国人観光客であると尚更だ。日本にいると常にハレであるので、神社に参拝することも当然ハレになる。 それでも、さらにハレの気を醸成するように努めると良かろう。 まずは、原則としてスマホなどを拝殿に持ち込ませないようにすると良い。これで、実践的な効果もある。スマホをマナーモードに設定するのは常識だろうが、忘れる場合があるのは避けられない。神事の途中で携帯が鳴ると不適切であるのは言うまでもないが、気を奪うことも多いのだ。だから、社務所で保管させてもらうのは良い。そして、スマホなどを渡すことで、日常ではない環境に入っている気持ちにもなるだろう。もちろん、安全な保管場所がある神社に限るが。...
普通の参拝
ハレを確保する方法を考えれば、やはり一般の参拝は特に難しいだろう。一般の参拝で、ただ神社を通り過ぎる時に寄り道して、社頭に立って拝礼するので、日常の用事の真っ最中である。参拝者側から考えれば、鳥居をくぐる前に祓詞を静かに唱えるのは良かろう。祓詞を思い出して、口にすれば、日常からの距離を置くと思われる。確かに、祓詞を暗記しなければならないが、それほど長くない。(大祓詞ではない。)しかし、ここで主に神社側から考えたいと思う。...
祭祀とハレ
日本の民俗学では、ハレとケが区別される。ケは日常を、ハレは非日常を表す。私が見た限り、普段そのままカタカナで表記されているので、もしかして元々の漢字は常用漢字ではないか、意味が時間とともに移ろいできたかと思う。神道や祭祀についての文脈で出会うと、ハレが祭祀を指すことは殆どである。つまり、祭祀は非日常であることは通説であるようだ。 私もそう思う。では、なぜだろうか。 神様実在想定から考えれば、すぐに説明できる。祭祀で神様にいつもより近づくので、特別な場面であることは決まっている。...
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