百数万円の壁

最近、所謂「百数万円の壁」が取り沙汰される。それは、正社員の配偶者(主に妻だが、法律は男女を区別しない)がバイトなどで108万円以下の年収を得たら、正社員の社会保障で扶養されるので、保険料等を納める必要はない。主に健康保険や年金だ。(場合によって、壁がもう少し高い金額になるそうだ。)しかし、年収がその基準を上回れば、自分で社会保険料を納めなければならない。だから、年収が100万円から109万円に上がれば、手取り額が逆に減る。

そのため、収入がその金額を上回らないように気を付ける人は少なくないそうだ。政府は、これを問題視して、手取り額が減らないように措置をとる会社に助成金を出すことにした。

この方針は支持できない。

まずは、主に非正規で最低賃金に近い賃金で働く労働者の問題を解決するために、大企業にお金を出す方針だ。(中小企業はそのような措置を取るための経済的な余裕はなかろう。)直接に労働者に給付した方がいい。

でも、それより、そもそも制度自体は問題だ。制度そのものに瑕疵の問題と社会像の前提の問題があると私は思う。

制度の瑕疵は、年収が増えても手取りが減ることである。はっきり言うだけでおかしかろう。しかし、より深刻な問題がある。このような仕組みは富裕層を対象とすることはない。(ところで、年収が、例えば、四千万円を超えたら所得税の計算で全ての控除や低い税率が撤廃され、全ての収入の40%が所得税として徴収された場合、4000万円の壁が発生するが、社会的にいい影響を与える可能性があるので、検討に値するだろう。)むしろ、貧困で苦しむ人に問題を与えそうだ。

この壁は、配偶者は正社員であるかどうかを問わずに発生する。だから、貧困で生活を辛うじて講じている人は、収入の増額を受け入れらない。年収が増えれば、手取りが減るので、生活が崩壊する。だから、急に大幅な収入な増額がない限り、このような方は自分の貧困問題を努力で解決できない。「貧困の罠」の重要な側面の一つだ。

そして、社会像の問題は、このような仕事に就職する人は正社員の配偶者や子供に限るということだが、昭和にそうだったとしても、平成にもそうではなかった。令和は尚更だ。非正規の共働き家庭を苦しませる問題である。

だから、解決策は大企業の助成金ではない。制度の根本的の修正である。まずは、社会保険の扶養を撤廃するべきだ。そして、個人の収入がどの金額であるとしても、ゼロであるとしても、その個人の経済力で社会保険料は納められる制度を発足すべきだ。(つまり、収入はない人は、保険料の完全な免除で社会保険に加入する。)これで、家族の存在を除外すべきだ。なぜなら、社会保険は、他の支え合いがなくなる場合、最終的に人の生活を保護する制度だ。家族の支援に配慮したら、社会保障は不要である前提での社会保障になってしまう。

だが、このような改善は期待できないだろう。なぜなら、現行の制度は富裕層や中層の上の方に美味しいので、国会議員の知り合いにとって改善は不利であるので、適性を評価する場合自然に不利が大きく見える。そして、大きくて根本的な改善が必要になるので、制度的な労力も少なくない。現在の官僚ができるかは疑わしい。(マイナンバーカードの問題等を見たら、信頼しづらい。)そして、移行措置には瑕疵があれば、脆弱な人が被害者になる。

社会問題は解決できないだろうかと思うほどだ。

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