搾取防止策

外国人材の受け入れを拡大する法案が現時点で国会で審議されている。私の基本的な立場は肯定的である。外国出身者の日本への移住に反対するはずはないし、日本のための大きな利益の可能性もあると思う。特に、人手不足を臨時的な対策で解決することは望ましい。環境問題を考えれば、人口増で問題を解決するわけにはいかないし、その上人手不足は現在の問題であるので20年後に労働者が現れ始める対策には意味はない。ロボットはまだ担えないので、短期的に外国人材を受け入れるしかない。

そう考えれば、外国人労働者は日本のために働いてくれている。そして、同じ人間である外国人労働者の状況に配慮しなければならない。私たちがそれほど利益を得れば、利益を提供する人の立場をよく考えなければならない。つまり、最低限として搾取されないように制度を整えなければならない。そうすれば、さらに日本の利益も見込まれる。外国人労働者の雇用経験は良好であれば、帰国してから親日になる可能性は高い。搾取を防ぐのは確かに義務ではあるが、結局日本の負担にならないと私は思う。

搾取を防ぐ制度は、雇い主に任せるわけにはいかない。雇い主は皆善意であるとしても、(事実は違うのは明白であるが)自分の利益と労働者の利益が対抗する。単純な例は給料である。高賃金は労働者の利益になるが、低賃金が雇い主の利益になる。実は、互恵関係も多いが、そのやり方を上手く判断するのは容易ではないので、制度で雇い主を手伝うことも必要である。

基本的な立場は、日本での雇い主には権力があるが、外国人労働者は脆弱な立場に置かれていることである。労働者は、母国から離れて、友人や家族はいないし、言語も流暢ではないし、法制度に慣れていない。搾取されやすい状態である。その問題を完全に解決できるわけはないが、緩和できると思う。

まず、在留資格を職種に限るのは良いが、雇用先に限ってはいけない。つまり、最初に日本に入った時点で働いたところを辞めて、同じ職業で別な雇用先を探す権利を労働者に与えなければならない。そうしないと、搾取の温床を用意する。雇い主の指摘に従わないと出国しなければならない状況であれば、労働者は不合理な指導に抵抗できるわけはない。方針を一つしか導入しなければ、これである。労働者に新しい雇用先を探す権利があれば、交渉する立場が一気に強くなる。

労働条件は妥当であれば、辞める労働者は少ないと予測できる。先ず、外国で、外国語で(つまり日本語で)新しい勤め先を探すのは大変である。そして、引越しも難しいし、住居を確保することも難しい。現在の条件はそれほど悪くなければ、それほど苦労しないと思われる。

そして、これと関係するが、雇い主の旅券保管を禁じるべきである。在留カードを保管することは既に違法である。(警察官の依頼で提示する義務があるので、常に携帯しないといけない。)法律上の権利はどうであっても、旅券を持参していない外国人労働者は事実上移動できない。

つまり、労働者の搾取を防ぐために、先ず搾取の職場から合法な逃げ道を確保するべきである。その逃げ道の存在だけで搾取が減少すると思われるので、使用されなくても有効である。しかし、これは第一歩にすぎない。

コメントを残す

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください

最近の投稿

最近のコメント

アーカイブ

カテゴリー

メタ情報