研究法人

商業のための研究費は、製品を販売する予定を持っている会社から経費として得られる。問題は、より基礎的な研究のことだ。すぐに会社の利益にはならないので、経費として出すことはできないだろう。道具等の必要経費が国家の研究によって抑えられてきたとしても、資金はまだ必要となる。

これは、原則として市民から集めるべきと思う。つまり、募金だ。募金すれば、寄附する人は自発的にお金をあげるので、税金に伴う強制の問題が発生しない。問題は、募金の形式だろう。

これで、最近クラウドファンディングという形式が人気になってきた。特に、海外でKickstarterというウェブサイトが大人気になって、合計で数千億円の資金が多くの企画に投入されてきた。一つの企画に数億円が投入されることも珍しくないが、資金が数十万円に止まる場合もある。日本で、academistというサイトが同じ形を研究のために活用している。まだ小規模に見えるが、長期的にこのようなやり方が普及するのではないかと思っている。

政府がやるべきことは、法整備だ。研究費を提供することは、社寺に寄附することとちょっと違う。公共の福祉に貢献する公益法人に寄附することとも違う。まずは、研究費を出したら、受けた研究者が真剣に働いても、成果が一切出ないことがある。研究は、未知の分野を調べることだから、結局何も見つからないこともある。寄付者の承知はもちろん重要だが、研究者には法的な防御があるのも良い。不満を感じる寄付者が裁判に持ち込むことはなくはないので、研究者を守るべきだ。

そして、このような基礎研究は社会に良いことであると認めたら、税制優遇を設けたら良かろう。つまり、研究に寄附するお金が寄附控除の対象になると良い。

そうするために、特殊の法人を設立したら良いと思う。認可を得た法人への寄附が控除の対象になるし、認可を得るために研究の条件を満たさなければならないので、寄附するための自信ともつながるだろう。そして、法人が条件を満たしたら、寄附金の返金を請求することはできないこととする。

研究法人の条件は、研究の内容とは関係しない。目的の一つは、権威のある研究者が認めない研究を可能とすることだから、研究の内容を認める条件として設けることはできない。宗教法人の認可に宗教は妥当な宗教であるかどうかのような条件を設けることと同じだ。だから、条件は研究の内容を明記すること、そして研究の結果を発表すること。発表は公表された形が良い。つまり、誰でも結果発表を読むことができる形式で、大学の図書館に入る必要のない形式が良いと思う。所謂Open Accessである。

場合によって、結果は「ない」とも言える。例えば、千葉県には大きな古代都市があったと信じる人が考古学調査のための資金を集めて、発掘調査を行ったら、「土しか見つからなかった」との結果になるだろう。しかし、それは結果だ。発掘調査のやり方を説明して、過程の写真等を載せて、興味のあるものを見つけなかったことを公表すれば、研究の結果を発表した。これで十分である。

このような研究法人の手続き等は、個人ができる程度にすべきだ。個人営業のレベルでできれば良い。もちろん、資金額が高くなったら手続きを厳しくしても良いが、低額なら簡易法人を設立する道を開くべきと思う。国家への見込める裨益は、利用する研究者が多ければ多くほど増すので、小規模な脱税が見逃されても、国益になる。(研究者に負担を課さずに不正を完全に防げたら良いが、それは現実的ではない。)

つまり、基礎研究の多くは、民間の研究者が国が開発した道具を利用して、国が整備して制度で集めた資金を費やして行うべき。それでも、国費が出される基礎研究もあると思う。

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