優遇の撤廃

この課題の冒頭で、言葉で他国をいかに批判しても、関与の根拠にならないと述べた。では、他の根拠にならない行動はあるのだろう。

その一つは他国に対して優遇を拒否することだと思う。

先ずは、これは関与であるかどうかを考えたい。通常の国際社会の行動は外交関係や交流を維持して、貿易を許可することだ。優遇を与えないことでこの通常の状態を損しない。だから、関与に値しないとも思えるだろう。しかし、優遇が長く続いてきた状態で、撤廃することで大きな打撃を与えることはできる。例えば、軍事同盟を結ぶのは義務でもないし、一般的でもない。明らかに優遇である。しかし、アメリカが日本との同盟を解除しようとしたら、大きな打撃を恐れて国家の行動を改める可能性は高いだろう。だから、関与に値する場合もあると言えるのではないか。

それでも、優遇を自由に提供したり撤去したりするのは基本だと思う。国家には、自分の正義や平等についての判断に基づいて動くことをさせるべきだ。

優遇を撤廃しても、民間レベルでの交流や貿易には関与しない。一般的な関税やビザの制限が適応されるので、難しくなる場合もあるが、それはイギリスの欧州連合の離脱と同じだ。イギリスは優遇を拒否して、優遇を失ったが、それは制裁などの根拠となるのはあり得ないだろう。離脱に反対する人さえ、邪魔されずに離脱する権利は国にあることを認める。

理論上、一つの国以外の全ての国と「特別」な貿易協定があるので、「普通」の関税などは事実上の貿易禁止に値する状況は考えられるが、現実味はあまりない。世界貿易機関の制度はそれに近いだろうが、一つの国の決断で或る国を機関から除外することはできないので、優遇を簡単に撤去することはできない。それは世界貿易機関の目的であろう。国の間の一時的な摩擦をきっかけに貿易が大きく乱れないように、規則が定まっている。(短期的な経済効果のために長期的な効果を犠牲としないように保障する目的もあるようだが、その効果について疑問を抱く証拠はすでにある。)

しかし、一般的な貿易協定が定める待遇を超える優遇は、イギリスの欧州連合離脱のように、自由に撤去できるのは基本である。他の国がその判断の根拠に同意しなくても、関与する根拠にはならない。実際の世界を見ても、おおよそその通りであるようであろう。イギリスの離脱は如何に愚策だったと思っても、イギリスを苦しませようとする国はなさそうだ。

だから、国際社会に影響力を築きたい国は、たくさんの国と強い優遇の絆を結ぶべきだ。そうすれば、その撤去を背景に要求できる。もちろん、絶対的な拘束力にはならないが、そのような拘束力は外交には愚か、内政にもない。優遇な絆は友好関係と同じようなことになるので、倫理的に世界に影響を及ぼすために、友愛を育むべきだろう。このような影響力は、国の基本方針に変更を要求できる状態にさせないだろうが、問題視する個別な判断や政策の改善を要求すれば、応じてもらえることは多いのではないか。

では、他の関与はどうだろう。批判する国の軍事侵略は関与の根拠になるが、それほどではない関与も根拠になり得るのだろう。実は、言葉や優遇撤廃以外の関与の全ては、第三国の関与の根拠になり得ると思う。次回からそのことを論じる。

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