森元会長の件

この数回の表現の自由についての投稿を事前に書いて、公開されるように設定した。公開を待っていた間に、オリンピック・パラリンピック組織委員会の森元会長の女性蔑視発言問題が発生した。これが素晴らしい具体例になるので、ここで論じる。

まず、「女性がたくさんいる理事会には時間がかかる」との発言は、私にも女性蔑視の発言に聞こえる。不適切な発言で、強く批判すべきである。ところで、私が小さな委員会の会長を務めたことがあるが、そういう傾向を見たことはない。よく話す人は男性も女性もいる。その上、委員会で発言することが委員の仕事になるから、趣旨は分かりづらい。

それで、解任するべきかどうかが問題になる。実際に辞任したことを踏まえて、批判を受けて辞任する自由を保護すべきだから、結末として批判できないだろう。しかし、「余儀なく辞任させられる」ことは解任とそれほど異ならない。批判に屈して辞任させるべきであるかどうかを考えなければならない。

この前の4回の投稿にわたって論じた原則に参照すれば、辞任させるべきではないと思われる。個人の女性委員に対してパワハラを行なった疑惑ではない。ただ単に賛同できない意見を表明した。それで、解雇等の懲戒処分を認めるべきではないと私が強調した。つまり、森元会長を会長の座に残留させるべきのではないか。

その結論をすぐに否定できない。しかし、もう少し考えるべき状態である。

まず、会長は、委員会を代表するポストだ。正式に代表するとは言えない場合でも、代表する印象を与える。そして、問題の発言はオリンピック・パラリンピックと関係する会合で行なったそうだ。その場合、組織委員会を代表して発言したかのように捉えられるのではないかと思われる。だから、組織を代表している立場で、組織が賛同できない発言する例外に当たる可能性がある。

もう一つの問題がある。普段、会長には議事を進める責任がある。この発言で、女性委員の発言を不適切に抑える恐れがあると思わざるを得ない。つまり、業務の執行と関わる発言でもある。

もちろん、会長がいつでも委員会を代表するわけではないし、女性の発言を実際に抑えた証言はまだないので、明白な事例ではない。しかし、私が掲げた基準に基づいても、すぐに辞任させるべきではないとも言えない。難しい実例だ。だからこそ、いい例になっている。

全体的に考えたら、辞任することは、そして辞任させることは、正しかったと私が思う。まず、上記の問題がある。業務の妨げになりそうな意見を表明したし、不適切に組織委員会を代表したかのように見せたので、辞任や解任が良いだろう。ただし、それは会長としての解任だ。一般委員として残留させるべきだと思う。一般委員であれば、委員会を代表しないし、意見が会議の進行を阻止しない。森元会長には役に立つ知見や経験があるはずだから、意見に反対するとしても、貢献させるべきだ。

一方、現在の社会で組織の役員の意見が組織の意見と関係しない常識はまだ浸透していない。だから、森元会長が委員のままでもいたら、日本のオリンピック・パラリンピック組織委員会が女性蔑視の意見を容認する、または黙認する解釈を招きかねない。断じて容認できない意見を表明する人と協働活動を行うことは、多様性を持つ社会の必要な要素だと思うが、まだ根付いていないことは事実である。

結局、委員会から追い出すべきかどうかはさらに難しい問題になるが、少なくとも会長として勤めさせない方がいいという結論に至る。

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